「ついつい・うっかり型」ヒューマンエラーと「あえて型」ヒューマンエラー
最近、「ヒューマンエラー」について内部講師をする機会をいただき、これまでの自分の人生を振り返り、自分がやってしまった「ヒューマンエラー」の棚卸しをしてみようと思いたちました。
「ヒューマンエラー」といえば「人的エラー」の意味位にしか捉えていなかったのですが、iso9001を専門分野としている身として、定義から考えてみる事にしました。
ISOによれば、「ヒューマンエラー」は「人間が実施する又は省略する行為と、意図される又は要求される行為との相違」(JISZ8115:2019)と定義されています。
その後、いろいろ調べてみたのですが、個人的には「ついつい・うっかり型」ヒューマンエラー(本人が意図せずに発生させてしまうヒューマンエラーと「あえて型」ヒューマンエラー(意図した行動がきっかけで発生させてしまうヒューマンエラーに分類するのがしっくりいく気がしています。
というのは、「あえて型」ヒューマンエラーは「決まり事を守らない」「横着をする」「手抜きをする」ことで発生するヒューマンエラーで、いわゆる「不安全行動」に相当すると考えられるからです。
※不安全行動とは「労働者本人または関係者の安全を阻害する可能性のある行動を意図的に行う行為」:厚労省の「労働災害原因要素の分析」によれば、労働災害の8割に人間の不安全行動が含まれる。
いままで、自分がやってしまったヒューマンエラーは、「ついつい・うっかり型」ヒューマンエラーに分類されます。誰もが同じようなエラーやミスを散々経験したことと思います。
幸い、私の場合、これらのヒューマンエラーが重大な事故につながったことはありませんでしたが、たまたまうまくいっているだけで実はヒヤリハットが多いということに気づいています。
今回、私自身、ヒューマンエラーの棚卸しをした結果、成り行きに任せるのでなく、きちんと原因分析して手を打つ、大きな事故になるのを未然に防ぐという考えにいたりました(再発防止よりも未然防止に力を入れる)。
ヒューマンエラーの発生の仕組みをよく表していると思っている理論があります。それは、「スライスしたチーズを何枚も重ね並べ、光を通したときに一直線に重ならなければ光は漏れない(事故は起こらない)が、チーズにある穴が重なったとき光がもれてしまう(事故になる)」という「スイスチーズモデル」理論です。
このモデルはヒューマンエラーの発生の仕組みをよく表していると思います。事故を防ぐには、スライスしたチーズ(防御策)をたくさん並べる、チーズの穴をできるだけ塞ぐことが有効な対策になることを教えてくれています。
何か事故が起きたとき、ヒューマンエラーが原因ですといってしまうと人間のやることだから仕方がない。ヒューマンエラーを起こした人へ教育をするといった対策はやや的外れで有効ではないことがわかっています。
「ヒューマンエラーは原因でなく結果である」というアプローチをとることによって、解決できないという思い込みを封じこめることが可能になると考えます。
特に、自分は絶対に大丈夫という変な自信、自信過剰は、思い込みであり、ヒューマンエラーにつながることが往々にしてあることがわかりました。
同じ間違いを起こさない。そして、大きな事故につなげないために「ついつい・うっかり型」ヒューマンエラーの対策をきちんと講じること、さらに「あえて型」ヒューマンエラーは、絶対に起こさないことを肝に銘じていきたいと思います。